代表取締役社長 兼田博光氏
品質の高い印刷物を生産するためにどんな機械をチョイスするか、
ということは創業以来考え続けてきたことです。
「ミューパイルジョガー」は紙積みを標準化しました。
1963年の創業以来、高品位印刷で知られるエイト印刷が常盤台工場に2018年8月に導入した反転
高積紙揃機「ミューパイルジョガー」には、紙に風入れする際、静電気除去エアーをブローすることの
できるオプション「用紙最適化装置」が搭載されている。同社は10年以降、主力の菊全機2台のUV化を
象徴とし、印刷品質のさらなる向上・安定化を追求している。その取り組みが深化するにつれ、現場では、
印刷機に流れる紙をいかに適切な状態に保つかが、重要なポイントとしてクローズアップされていた。
用紙最適化装置の搭載効果はてきめんだった。紙積み労力そのものの軽減や、手積みで紙に力を加える
ことで発生するヘコなどの紙への傷入りが防止されたのはもとより、紙粉の付着、印刷機でのフィーダー
ストップなど、静電気に起因する現場の悩みが解消に向かった。こうした効果を実感しつつ兼田社長は
「これからも品質管理を強化するとともに、一層の効率化を図っていきたい。また、時間的余裕を
オペレーター教育に振り向けていきたい」と新時代の工場づくりを見据えている。
エイト印刷は創業以来「色へのこだわりと品質第一」がモットー。1971年に枚葉工場として新設した常盤台工場も「さらに色にうるさく、色に厳しく、顧客にいい色を提供しようと非常に堅牢な構造とした」(兼田社長)。また、「高品質な印刷は現場の社員が生み出す」(同)との考えから、作業員の足腰への負担を考慮したフローリング敷きだった。
そんな工場から生み出される印刷物の色はいつしか「エイトカラー」と呼ばれるようになり、顧客の大きな支持を集めるようになっていった。
兼田社長はこの10年、こうした伝統を踏襲しながら革新に挑んでいる。主力の枚葉機を2010年と11年に相次いで高感度UV化し、菊全5色機2台体制とした。両機には各種自動化装置やインラインの品質検査装置を搭載している。本機校正や極小ロットを担う油性の菊半4色機とともに、制作からプリプレスまで一貫したカラーマネジメントを構築している。02年から続く高精細印刷に加え、最近では高演色印刷にも対応。さらに近年の環境意識の高まりに対応するノンVOCインキによる印刷も行っている。
色の標準化ではQC鳥瞰図評価・管理法による色調の数値保証を全社に広げ、これに基づく印刷で、ジャパンカラーの標準印刷認証とマッチング認証を取得している。
こうした展開は、インキをはじめとした資材の見直しや工程改善の積み重ねが基本となる。兼田社長は一連の取り組みの背景について「印刷物への傷入りや色の再現、初版と再版の色の差などさまざまな面で顧客の許容範囲はゼロに近い。それに対応するためには全社を挙げて標準化に取り組む必要がある」と語る。今回のミューパイルジョガーの導入はその一環だが、兼田社長は紙積み工程の改善にとどまらず、揺るぎない「印刷品質の柱」と位置付けている。
ミューパイルジョガーの導入効果は、省力化から印刷品質の向上まで幅広いものとなった。現場からの評価は高い。
常盤台工場印刷課課長の神田司氏はまず、省力化を挙げる。「以前の手積みでは、紙をさばいて風を入れ、パレットに1丁ずつ載せるという作業を繰り返し、腕や足腰に大きな負担が掛かっていた。すぐに退職してしまう社員もいたほどだ。それが導入後は、ワンプむきから紙積み、風入れまで、横の軽い動きだけで済むため、非常に楽になった。また、パレットに1本積むまで10分を切れるようになった」。
静電気の除去効果については「印刷機のフィーダーストップがほとんどなくなった。用紙の曲がりによるダブりも大きく改善している。紙粉をしっかり除去してくれるため、ピンホールが減った」と強調する。また、「排紙部での紙の揃いが良くなったため、検品がしやすくなった。製本の子会社のエイト紙工からは員数機がスムーズに回るようになったとの報告がある」という。
同社では現在、紙積みの位置付けを大きく高めている。池谷本部長によると「入社1か月ほどの社員にも使わせているが、うまく紙積みできている」といい、「高品位で安定性の高い印刷を実現するために展開してきた印刷の標準化を支えるものとして、紙積みもまた、1つの工程として標準化された」と指摘する。
兼田社長は「品質の高い印刷物を生産するためにどんな機械をチョイスするかということは創業以来、考え続けてきたことだ。紙積み機も同様だ」と語っている。
ミューパイルジョガーは紙積みの精度を上げるとともに、時短も効果としてもたらした。すでに「その時間をオペレーター教育に使っている」とのことだ。フィーダー側の人員をオペレーションスタンド側に回す時間を増やすシフトを組んでいる。「間もなくその成果が表れることになっている」と期待を高めているところだ。「エイトカラー」を担う人材が厚くなっていきそうだ。
ミューテックの紙積機・紙揃機・計数機など、各種製品を導入されたお客様を取材。現場の声をお届けします。