株式会社アイワードさま

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代表取締役社長 奥山敏康氏

紙面検査装置搭載の最新鋭機で印刷し、不良紙を「ミューパイルジョガー」で抜いていく
――それがないと「スマートファクトリー」は実現しません。

美しさを旨とした自動組版システムや、ハイエンドなカラー印刷を実現し、並行してそれらを統合するワークフローを確立するなど長年、書籍などの「ブック印刷」に徹してきたアイワード。技術集約が進んだ帰結として次なる目標はスマートファクトリー化であった。
 ブック印刷の中心テーマに据えたのが「1枚ずつ検査された正しい刷本だけを次工程に渡す」こと。
16年末、石狩工場に最新鋭の8色両面兼用機を導入したのを機に、保有する枚葉機5台すべてにインラインの紙面検査装置を搭載させ、用紙に固有番号を打ち、良品と不良品の番号特定を可能にした。そして不良紙の抜き取りはすべて、ミューテックの用紙最適化装置搭載の反転高積紙揃機「ミューパイルジョガー」上で確実に行う形とした。
 奥山社長は「一つの工程の中で安全安心が担保されていれば顧客は絶大な信頼を寄せてくれる。紙面検査装置とミューパイルジョガーの一連の工程がスマートファクトリー構想の一翼を担っている」と語る。

■ 組版・カラー印刷・製本を高度化 ■ 高品位な「ブック印刷」への歴史

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 同社は1978年に初めての両面機ハイデルベルグ社製菊半寸のび2色両面兼用機を導入した。それまで片面機でブック印刷に取り組んでいたが、さらに特化しようという投資だった。
 その後、一貫してさまざまなハイデルベルグ社製両面兼用機を導入していった。2003年には、石狩工場に当時最新鋭の8色両面兼用機2台をいずれもカットスター付きで導入し、両面カラー印刷を連続稼働できる環境をつくった。これにより、高い印刷品質と短納期化を強く打ち出す戦略に取り組んだ。「その時に主要な顧客層が変わり、仕事内容も高品位化していった」(奥山社長)。全国の美術館や博物館、出版社といった層が主力顧客となっていった。
 また、当時はデジタルカメラの普及等により、画像処理のデジタル化が一気に加速していた。顧客は画像を、色域の広いディスプレーで見るようになっていた。「ところが、印刷会社は色域の狭いCMYKでしか印刷できないという逆転現象が起きていた」(同)。そこで当時専務だった奥山社長は04年、全国に先駆けてRAWデータの入稿を受け付けることにした。顧客とともに色基準を作りながら、ハイエンドな画像処理を模索した。翌年には8色機を生かし、ハイデルベルグの7色プロセス技術「スーパーファインカラー」での広色域印刷を正式にビジネスに加えた。
 同時に、組版技術の変化にも対応していた。システムのバージョンアップが短期間の間に続くとともに、フォント技術が進化する中で、日本語組版の美しさや他社にはできない特殊な組版を実現する自動組版技術を開発し続けた。同社ではこれを「文字情報処理システム」と呼ぶ。文字というテーマに対し、あらゆるソリューションを獲得していった。
 製本技術も高度だ。13年にはPUR製本で束厚80ミリを可能とした。加工精度の高さがうかがえる。
 03年の8色両面兼用機導入以降、プリプレスからプレス、ポストプレスまでのそれぞれの工程で、高品質な本作りのため、社員一人ひとりがさまざまな困難に立ち向かってきた。それらが集約された形が「ブック印刷」という表現となっている。

■ 全数検品がスマートファクトリーの「肝」
■ 紙面検査装置とミューパイルジョガーが不可欠に

 奥山社長は14年に社長に就任した。組版や印刷、製本それぞれの技術向上や、それらを統合するワークフローや管理システムのレベルアップの陣頭指揮を執り続け、ブック印刷の安定的な生産が続いていた中、15年に「それらをさらに集約していったらどうなるのか。何を目指さなければならないのか」と考えるようになった。その答えが「スマートファクトリー」だった。「一つひとつの工程すべてが最適化されて初めて、スマートファクトリーが実現する」と、全社を挙げた新たな高みを目指す取り組みが始まっていく。
FREEHTML5.co Free HTML5 Bootstrap template  印刷現場では大きな改革に乗り出した。16年末、菊全判8色両面兼用機2台と、同2色両面兼用機2台に代え、drupa2016世代の最新鋭の8色両面兼用機「スピードマスターXL106-8P -18K」1台を導入した。さまざまな自動化システムが搭載されているが、インラインの自動色調・見当調整システムが内蔵されているのが特徴だ。18年現在、同機を含め両面兼用機4台と片面7色機1台が稼働している。
 また、この1枚ごとの色管理に加えて肝となるのが、1枚ごとの紙面検査だ。印刷工程で印刷不良が混入しない正しい刷本を作り、次工程に渡すとの考えから関連システムを整備することにした。
 紙面検査で検出された不良紙を抜き取る用途で、静電気除去エアーをブローしながら紙積みを行うミューパイルジョガーを2台導入している。奥山社長は「紙面検査装置とミューパイルジョガーがなければスマートファクトリー化は実現しない」と言い切っている。
 紙面検査装置とミューパイルジョガー導入前の工程では、印刷オペレータは汚れやごみの付着、ピンホールなどの検査は、数百枚ごとの抜き取りでの目視にとどまっていた。不良紙は主に、折り工程で排除する格好だった。
 導入後はそれが一変している。ワンプで納入される紙はすべて、ミューパイルジョガー1台で除電されながらパレット積みされる。印刷が開始されるとすべての紙のドブに対し、フィーダーボード上に設置されたインクジェットヘッドにより固有の番号がナンバリングされる。機上では1枚ごとに先刷り面・後刷り面がカメラで検査されるとともに、結果がデータベースとして蓄積されていく。不良が見つかると、検査システムが警報を発し、モニターに不良箇所が表示され固有番号が記録されるとともに、デリバリー部で当該刷本にテープが挿入される。デリバリー部でパレット積みされた刷本は、もう一台のミューパイルジョガーに運ばれる。傍らにはPCが設置されており、担当者はディスプレー上でテープが挿入された紙の不良箇所を確認しつつ、現物を目視チェックしながら排除する流れとなる。印刷の状態によっては「ディスプレーを見ながらテープ付近の紙を徹底して確認することにしている」(大沢眞津子専務取締役総務・生産管理本部長)という。不良紙の排除が容易となった。ミューパイルジョガーのジョガー部ではOK紙のみが除電エアーをブローしながら揃えられる。最適な状態で積まれた紙が次工程に送られる格好となる。
FREEHTML5.co Free HTML5 Bootstrap template  大沢専務によると「現在、検査装置を通っていないものは製本工程では受け付けない約束になっている」。「当社としては顧客にとって本当に安全安心で当社に任せれば大丈夫と言われるような本作りをすることを基本としている。だから、紙面検査装置とミューパイルジョガーがないと困る状態だ」と強調している。
 森田一男枚葉印刷部部長は現場の負担の軽減をメリットとして挙げる。「後工程からの再検査のための戻りは従来の半分もない状態だ」。「不良紙を的確に抜き取ることができているため、顧客からのクレームはほぼなくなっている」。  大沢専務はさらに「ミューパイルジョガーでの工程により、ミスに対する取り組み方が大きく変わった。導入からわずか1年半ほどの間にすっかり定着している」と語っている。また、「当然ながら、折りを中心とした後工程の負担や残業が減った」との効果も挙げた。
 また、用紙最適化装置による除電効果についても実感が深まっているという。森田部長は「スムーズな印刷を実現するには印刷機に積む前に除電する必要があるという考えに行きついている。印刷の数時間前に積んでおき、順番が来たら印刷機に掛けるという形を取っている。少々時間を置くと紙が落ち着くようだ。また、紙の厚さによって除電エアーに強弱をつけている。」と説明している。

■ 品質安定性がトップの条件 ■ ミューパイルジョガーはその「仕掛け」

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 XL106での印刷ではプリプレス技術を反映した最高品質を実現している。顧客が立ち合いに来ても、ほぼすべてが刷り出し時点でOKとなる状況となっている。
 奥山社長は「顧客は安定的な品質を求める。安定性が印刷会社としてトップを走ることにつながっていく」という考えを強くしている。
 印刷機上で1枚ごとに紙面検査されることでオペレータは「さまざまなトラブルを想定して稼働させるプレッシャーから解放された」(大沢専務)。そして、「色を中心とした品質管理に集中できるようになった」という。
 ミューパイルジョガーが加わることにより、不良紙の抜き取りが容易となることで「印刷工程で安全安心を完結することができるようになった。それがいくつもの工程の中で担保されれば、顧客は絶大な信頼を寄せてくれるはずだ。紙面検査装置とミューパイルジョガーはその仕組みであり仕掛けだ」(奥山社長)。
 ミューパイルジョガー導入、ひいては、スマートファクトリーの本格的なスタートから1年半ほどが経過した。現場の活力も増している。奥山社長は「スマートファクトリー化の活動が今後、さらに花開くよう努力していきたい」と決意を新たにしている。